　　　　　　　　　　　海に抱かれて　　～明日への翼～　　　　

　　

　　今こうして瞳を閉じると　まぶたに焼きついた懐かしい光景
　　　
　　静かに耳を澄ませば　聞こえるあの日と同じ　波の囁き
　　　
　　決して取り戻せない　あの時代（とき）
　　　
　　波打ち際をひとり歩けば　いにしえの過去はそっと波間に漂う

　　振り返れば　僕の人生　ささやかな夢に支えられて　何とか今日まで歩いてきた

　　途中　自分の足で立つことも出来ない日もあった

　　風が吹けば飛ばされそうなこの魂（こころ）

　　波が来れば　今にも崩れそうな砂の城

　　後を追いかけても逃げていくだけの儚い夢

　　　心の闇と闘いながら　十字架を背負い　常に何かに怯えていた

　　　詩を綴り　夢を紡ぎ　ひたすらに心のよりどころを探していた

　　　
　　いつかふたりで訪れた夏の海　あの頃とちっとも変わらない

　　つないだ掌　すり抜ける風　ふと伝わる手のぬくもり

　　決して取り返せないあの時代（とき）

　　波打ち際にひとり佇めば　いにしえの過去は静かに波間に憩う

　　振り返れば僕の人生　何ひとつ約束などできないまま　人を裏切って生きてきた

　　悔やんでもどうすることもできなかった日々　心の叫びと裏腹に何かを失ってきた

　　明日を愁い　挫けそうなこの魂（こころ）で

　　時代が変われば　いつか自分も変われるのだろうか

　　今はすべての葛藤をかなぐり捨てて　ひたすら心の安らぎを求めていたい
　　　ただこうして　潮の流れを肌で感じ　いつまでも海に抱かれていたい

　　　
　　　きっと明日は飛べるはず　その翼を探しながら
　　
　　　微かな期待を心の片隅に置いて　これから歩いていこう